◆愛しきイギリス
イギリスに行ったのは2015年5月。
この国の正式名称は、
グレイトブリテン
および北アイルランド連合王国と言い、
この長ったらしい名前は、
中学の地理で初めて知った。
いかめしくも実直。
それがこの国の名前から受ける印象で、
名前の由来は、
イギリスの長い歴史の合従連衡によるもの。
国旗となるユニオンジャックは、
その国の歴史を物語る代名詞で、
イングランド、スコットランド、
ウェールズ、そしてアイルランドの
4つの国の国旗を一つにしたものだという。
そして近世以降、
イギリスと親密な関係にあった、
ニュージーランド、オーストラリア、
フィージーなどの国々は、
宗主国・イギリスに敬意を表して、
このユニオンジャックを冠した国旗を
用いている。
イギリスは常に世界の軸にあった。
とりわけ、
近世以降のヨーロッパの歴史を刻む
最も重要な国の一つで、
産業革命はこの国を起点に始まり、
世界のあらゆる文化の軸にこの国があった。
文学界の巨匠、
シェイクスピア然り、
アガサ・クリスティ然り、
そして現代音楽の系譜に燦然と輝く
ビートルズもまた然り。
彼らの文学や音楽は世界を席巻し、
今もなお歴史に名前をとどめている。
スポーツの世界でも、
サッカー、ラグビー、
クリケット、ゴルフなどの
発祥の地としても知られている。
ともあれ5月16日(土)、
JAL便で羽田空港を出発し、
ロンドンを経由してエジンバラを目指した。
イギリス8日間の旅――
スコットランドの中心地、
エジンバラを起点に、
ロンドンを目指して南下してゆく。
ヒースロー空港を中継し、
エジンバラに到着したのは、
現地時間の夜9時。
殆んど徹夜状態でキツイ。
飛行機に乗っている間は、
さほど感じなかったが
ボディブローのようにじわじわ効いて、
数日ほど、
夜の早い時間に睡魔に襲われた。

◆イギリスの天気
天気には悩まされた。
四季のあるイギリスとはいえ、
季節感は日本に較べて
1ヶ月以上のズレがある。
日本が5月半ばならば、
イギリスは4月半ばかそれ以前。
だから寒い。
羽織るものが必要だし、
朝も冷える。
とりわけ寒暖の差が激しく、
一日の間に四季があるともいわれている。
それ以上に
天気の変化に驚く。
一日の天気が比較的安定している
日本に較べると、
目まぐるしく変わる。
それも半端じゃなく、
朝は凍えるように寒く、
薄曇りの空から薄日が射し、
やがて暖かな陽射しが射して、
今日はいい天気かなと思っていると、
一転して雨が降りはじめ、
その雨も忽ち止んで、
あぁひと安心と思うと
また雨が降る。
そんな風にして
一日の間に天気がコロコロと変わる。
だからイギリス人は天気の話が好きらしい。
会話の事始めに
挨拶代わりに天気の話をする。
イギリス人にとって
天気と生活の関係は密接だ。
雨にも慣れっこらしく、
イギリス人はちょっとした雨では
傘をささない。
雨が降るのは日常茶飯事で、
一日の間に雨が降る確率は高い。
だから、ひとしきり降る雨のために
傘を用意するかどうか。
そんなときイギリス人は、
濡れながら歩くことを選び、
濡れることを嫌う日本人は、
雨が降れば、
コンビニに飛び込んで傘を買う。
そんなわけで日本人の玄関には、
ビニール傘がたくさん並ぶことになる。
だからガイドさんは、
――朝、天気がよくても、
念のために傘は持っていきましょうねと言う。
実体験として
イギリスの天気を体験すれば、
なるほどと思う。
ロンドン経由で
エジンバラに到着したのは
ようやく陽が暮れようとする9時。
飛行機からタラップを降りると、
――寒ッ!
氷点下に近いのかも・・
イギリスは海流の影響で
北と南でそれほど寒暖差はない。
しかし、地図を広げれば、
エジンバラは樺太辺りの緯度を示している。
緯度と海流――
この因果関係は天気の流れを左右し、
それだけに天気の変化も日本とは大違い。
テレビで見る天気予報も
雨のち曇り――、
といった見慣れた予報ではなく、
一日の雲の流れを時系列に移動させ、
みなさん今日の天気は、
雲の流れで判断してくださいね、
というわけだ。
◆イギリスの食事
イギリスの食事は、
不味いことで知られている。
旅の愉しみのひとつに食事があるが、
イギリスに限っては、
食事には余り期待しない方がいい。
とはいえ実際に食べてみると
それほど不味いわけじゃない。
イギリスの有名な食事のメニューに
フィッシュ&チップスがある。
揚げた魚にポテトを添えたもので、
滞在中に何度か食べた。
不味いかどうかは場所によりけりで、
添乗員さんが紹介した店は美味しかったが、
それでもイギリスの料理は、
どこかワンパターンで飽きる。
ホテルの朝食はバイキングスタイル。
冷たいものと温かいものを
別々のコーナーに並べ、
熱い料理は皿に盛ってテーブルに運ばれる。
皿に並ぶものはどこも似ている。
煮豆とポテト、
茹でたトマトにベーコン。
イギリス人は生野菜を食べないし、
どんな野菜でもグズグズ煮る。
皿には大抵、
フライドポテトか、
茹でたじゃがいもが載る。
焼きトマトも定番だし、
そして煮豆も。
見るからに調理に手間をかけない。
だから飽きる。
レストランメニューも、
日本人ほど味の繊細さはないし、
高級料理を食べても、
日本のラーメンやとんかつ、
カレーが脳裏をよぎり、
それを懐かしく思う。
日本人なら素材を活かして
味を引き立てる工夫があるし、
ラーメンだって全国津々浦々、
腕によりをかけたご当地ラーメンがある。
しかしイギリス人は、
味がわからなくなるまで茹でて
食材本来の味を活かすことなく、
味付けの妙味もない。
イギリスの料理は、
調理中にあまり味付けをしない。
例えばテーブルに並んだ料理は、
味のない料理に
自分好みに調味料で味を付ける。
そんなわけで、
旅行者は味のない料理にとまどい、
結果的にイギリスに旨いものなし、
との評判が定着してしまう。
◆イギリスの交通事情
車は左側通行。
日本と同じだ。
だから簡単に運転ができそうだが、
交差点に信号はない。
全てではない。
ロンドンなどの大都市では
信号が幅を利かせているが、
地方の道路に信号は殆ど見当たらない。
代わりにラウンドアバウトと呼ばれる
ロータリー状の交差点があり、
この円の周りを回りながら、
右折し、左折し、あるいは直進して
目的の方向に進む。
日本では馴染みが少ない。
交差点の円をぐるぐる回りながら、
車の流れを見て飛び込む。
見ていると合理的だなと思う。
日本の道路は、
車が一台も通らなくても、
赤信号で止められることがあるし、
車が通り過ぎても
信号が変わるまで待たなければならない。
無駄があって、
時間のロスがある。
しかしこの方式が日本で適用できるか、
といえば簡単じゃない。
これを作る空間上の余地が必要だし、
車の往来が激しければ、
信号の方が便利だろう。
そこは一長一短だと思う。
2018.10.15