紅葉前線も
足早に里に降りて、
この辺りは11月半ばが、
紅葉の見頃でしょうか。
本格的な秋の到来です。
いつだったかラジオで
東京近辺の紅葉の見所を
紹介していたことがあって、
紅葉の人気スポットはダントツで、
青山絵画館前の銀杏並木でした。

ドラマにも登場し、
雑誌でも度々紹介されています。
青山通りから絵画館へ向かう
神宮の杜の一角に、
この銀杏並木があります。
あの風景には浪漫がありました。
学生時代の友人は、
この通りをモチーフに曲を作りました。
なんとも不思議な旋律でしたが、
ロマンにあふれ、
この通りのイメージにあうな、
と感じていました。
青山通りに面した入り口には
カフェテラスがあります。
あのカフェの前を通るたびに、
いつも入ってみたい、
と思っていました。
青山の、
青山らしい風景の中で、
銀杏並木に面したテラス席で珈琲を飲む。
それだけでも絵になるような、
そんな浪漫のある風景に憧れていました。

大分前になりますが、
店の前でメニューを見ながら、
高いなぁと思いつつ通り過ぎましたが、
娘に言わせると、
そんな僕はケチなんだそうです。
以前、新宿伊勢丹のデパ地下で
パリに本店のある有名なチョコレート店、
ジャン=ポール・エヴァンの前で、
そのケチ振りを披露してしまいました。
チョコレートは超ブランド品。
店の片隅には、
10人ほど入れば一杯になるような
小さな喫茶コーナーがあり、
20分ほど待って入りました。
ケーキは600円ほどでしたが、
紅茶は1,000円。
紅茶だけにしようとしたら、
――ケチなんだから、
と言われて渋々ケーキも注文しましたが、
食べて納得。
このチョコレートケーキは絶品!
濃厚で深い味わいは、
舌を巻く美味しさでした。
――美味しいものには金をかけよ、
食を愉しみなさい、
と娘が食の哲学を説いて諭すのでした。
紅葉の名所ランキングには
母校の銀杏並木が登場しました。
あの銀杏並木は懐かしい匂いがします。
紅葉の季節は少し後でしょう。
駅から校舎に向かう通りの両側には、
銀杏の巨木が覆う。
黄色く色づいた銀杏の葉が舞い、
大学へ向かう通りを埋め尽くす。
学生たちは足早に、
銀杏の葉をきゅっきゅっと
踏みしめながら歩いてゆく。
銀なんの匂い、
夕陽に染められて舞い落ちる銀杏の葉。
秋の風景のひと駒でした。

札幌に行った時の紅葉も見事でした。
ホテルの近くに中島公園があり、
公園のもみじの葉は燃えるような赤。
本当に見事な紅葉でした。

紅葉の風景を思い浮かべながら、
玉川上水を思い出しました。
娘は大学時代、
小平市に住んでいたことがあって
付近には玉川上水が流れていました。
玉川上水といえば、
太宰治が入水自殺をした川としても
有名ですが、
東京にもこんな所があるのか、
と再認識させられました。
川にそって遊歩道があり、
鬱蒼としたナラやブナの木に覆われて、
歩けば、さくさくと
木の葉を踏みしめる音がする。
小道の途中には絵を描く老人の姿や、
犬と散歩する親子連れがいる。
秋深い季節――、
心が癒され、
自然の美しさが、
しっかりと胸に刻まれる光景でした。
しかし後日、
テレビでこんなニュースが
流れていました。
場所はあの場所。
武蔵野の面影が残るこの風景に、
異論を唱える人がいる。
それは川沿いに住む人たち。
紅葉の季節が終わり、
枯葉が舞う季節になると
格闘が始まるという。
庭先にはうず高く枯葉が積もり、
雨樋は枯葉が詰まって機能しない。
そんなことがあって
市に何度も、
何とかしてほしい、
木を伐採してほしいと陳情するが、
自然の木を伐採するのは忍びない、
と役所も重い腰があがらない。
住民は怒り、
業を煮やしていると言います。
しかし自然の景観は都市の財産。
住人の悩みもわからなくはないが、
武蔵野の風景は東京の貴重な財産。
人が自然と共生し、
共存することでその景観が守られ、
人の心が癒されて、
潤いを与えてくれる。
住民の暮らしに弊害はあるのだろう。
けれど東京に住みながら、
そうした自然の景観に恵まれて、
それが実感できることは、
とても幸せなことではないのか、
と思うのです。
2018.11.7