ポーランド②/美しき残像

1日目
クダンスク。
旧市街が美しい。
市内散策途上のオリーヴァ教会には
世界で一番美しい音色と
されるオルガンがあり、
バッハの「トッカータとフーガ」など演奏されて
これが圧巻だった。
五臓六腑に響く音色は美しく
心に染みわたりました。
かつてはレコードのバッハに聴き惚れて、
いつかは本物を聴きたい,
と思っていましたが、
念願を叶えることができました。

その後マルボルク城へ。
到着したのは渋滞に巻き込まれて
夕闇が迫る4時半。
それでも赤い城は、
夕焼けに染まって美しい。
城を取り囲む城壁はいかにも堅牢で、
広さはゴシック建築の城として最大だという。
全てが赤いレンガ造りで、
12世紀にこの辺りを支配した
ドイツ騎士団の拠点といわれている。

2日目
世界遺産の都市・トルン。
トルン観光後、
ポーランドの旧首都・ポズナンへ。
いずれも中世都市の面影を色濃く残す
美しい都市ですが、
気忙しく移動して、
ゆっくり見ることはできなかった。

トルン

3日目
ヴロツワフ。
旧市街を散策。
美しい中世の都市で、
クリスマーケットの準備中。
ここで眼を引いたのは、
街の至る所にいる小さな小人の像。
共産主義から民主主義に移行した頃、
共産主義社会を風刺して作られた、
と言われていますが、
今は専ら観光用。
眼を凝らせば、
あちらにも、こちらにも。
およそ200体あるそうで、
そのひとつひとつの表情が面白い。

ヴロツワフ

 

高さ15cmほどの 小人の像が街の至る所に

4日目
アウシュビッツ収容所。
収容所の施設やガス室など、
いくつもの展示物を見て、
見るほどに暗鬱な気持ちになる。
これがホロコーストの現実。
ここに多くのユダヤ人が送り込まれ、
そして死んだ。
130万人の虐殺。
アウシュビッツを舞台にした映画の中で、
大勢のユダヤ人が
貨車の中に詰め込まれ、
収容所の入口で降りてゆくシーンがあり、
あれがこの場所で、
これからなにが待ち受けているのか、
不安な面持ちで
銃を構える兵士の前を歩く姿を思い出した。
見学した日はとても寒い日で、
冷たい雨が降って冷気が肌を刺した。

午後はヴィエリチカ岩塩坑へ。
中を案内してくれたのは、
日本語の堪能なポーランド人。
ヴィエリチカは巨大な岩塩坑で、
坑の長さは全長300km。
13世紀に堀りはじめられ、
最近まで700年にわたり堀り続けられた。
見学途中には、
岩塩坑の歴史や伝説を物語る
塩の像があり、
広大な礼拝堂もある。
町ひとつがすっぽり収まる広さといわれ、
ごく一部が開放されている。
世界遺産。

アウシュビッツ収容所入口

ヴィエリチカ岩塩坑

5日目
クラクフ。
ポーランドの京都といわれる古都。
石畳と赤いレンガ塀が美しい。
市内散策では運河沿いの道を辿り、
旧市街に至る道は趣があり美しい。
広場はクリスマスマーケットの真っ最中。
中央には大きなクリスマスツリーが聳え、
イルミネーションで飾られた店が
広場を埋め尽くして、
夜の街を賑やかに彩っていました。
豪華な飾り付けの
二頭仕立ての白馬の馬車が広場を闊歩し、
人の群れはホットワインを手にして広場を歩き、
にこやかに談笑しながら
クリスマスを迎える夜を愉しんでいました。
ヨーロッパではごくありふれた風景だろう。
けれどこうした情景にも
ヨーロッパの匂いを感じる。
この日、当初の予定にはなかった
ダ・ヴィンチの「白テンを抱く貴婦人」を
鑑賞することができた。
世界遺産の街。

6日目
ワルシャワ。
前日、クラクフから国内線でワルシャワへ。
この日は雪が舞い、
本当に寒い日。
底冷えして零下7度といわれ、
歩いていても
観光もそこそこに
美しい町並みを堪能するような
余裕はありませんでした。

観光終了後、
昼食レスランの「ホノラトカ」へ。
ショパンがよく来た店として知られ、
入口の壁に
ショパンの似顔絵が描かれていました。
ショパンはピアノの詩人。
高校時代よく愛聴していた。
ワルツやバラード、
ノクターン、スケルッツオなど、
珠玉の名曲が散りばめられ、
とりわけルービンシュタインの弾く
ショパンが大好きだった。
ワルシャワをもっとゆっくり見たかった。
ワルシャワは世界遺産の都市。
戦禍の街から見事な復興を遂げ、
ひびわれのひとつにもこだわって、
戦前の姿に蘇らせた都市。
それはポーランド人の気概であり、
誇りであり、
歴史を大切にするヨーロッパ人の気質を
物語る姿でもあるのだろう。

ワルシャワを訪れた日は
どんよりとした雲に覆われ、
冷たい雪が舞って、
景色は霞んで見えました。
その向こうには
色とりどりの屋根や壁の建物が覗いて
それが美しい。
いつか再びこの地を訪れることができたなら
・・と思う。
ポーランドの町並みは
どこを見ても美しい。
その一方で、
バスの中から見るポーランドは
果てしなく畑が広がり、
のんびりとしているように見えました。

2018.12.7.