未来都市シンガポール-1/ラッフルズホテル

真冬の日本から
常夏の島シンガポールへ。
2016年2月19日、
0:05羽田発JAL便。
出発後7時間余で
目的地に到着した。

シンガポールは、
赤道直下にあり、
熱帯雨林に分類される。
人口550万人。
住民の75%は中国系で、
ほかにマレー系、
インド系などが占める。
経済は急速な発展を遂げ、
ビジネスの中心地として
貿易、金融、交通、医療、教育など
あらゆる面で世界のトップレベルにある。

とはいえ僕自身は
この国に魅力を感じなかった。
街の中心には高層ビルが林立し、
一見すると未来都市のようでもあり、
夜になれば、
眩いばかりの光のショーが繰り広げられる。
しかし旅は癒しを求める場。
その国の伝統や文化を知り、
自然に慈しみ、
それらと共生する時間。
それが旅の魅力であり、
シンガポールは
そうした点が欠けているように思えた。
しかし、行ってみて
そうした先入観が一転した。
シンガポールには、
シンガポールにしかない魅力があった。

このときは娘夫婦と
その子供と5人で出向いた。
6ヶ月の幼な子を抱えての旅。
だから無理はできないし、
ゆったりした旅にしたいと、
少しの観光を挟んで
ホテルライフを愉しむことを優先した。
だから、ラッフルズホテル。
しかし、シンガポールといえば、
有名なマリーナ・ベイ・サンズがある。
屋上に船を浮かべたような
大きなプールがあり、
シンガポールのランドマークというべき
存在になっている。
宿泊者は、
眼下のシンガポールの絶景を愉しみながら、
ひと泳ぎすることができる。
館内には巨大なショッピングモールもある。
常に大勢の観光客であふれ、
初日の夜、ここを訪れたが、
中央には4階まで突き抜ける
大きな吹き抜けがあり、
上から覗くと
世界的なブランドショップが並んで、
その威容は実に壮観だった。
とはいえ、
買いもしないブランド店があるばかりで、
いささか食傷気味。
マリーナ・ベイ・サンズは、
都会の喧騒が雑居して、
どこかしら違和感を覚えました。
それに比べると、
ラッフルズはこれとは対極にある。
コロニアル風の瀟洒な建物が特徴で、
サマセット・モームや、チャップリンが、
常宿の宿として利用したホテルで
全室がスウィート仕様。
このホテルを一言でいえば、
貴婦人のような風雅な佇まい。
都会のオアシスとして
絶好のロケーションにあるといえます。
泊まった部屋の隣の扉には、
サマセット・モーム・スウィート、
という銘板もありました。
館内のショッピングゾーンには、
小粋で洒落た店が並んで
一般客も利用できますが、
宿泊棟に立ち入ることはできない。
だからホテルの中は都会の喧騒を離れて
静かで落ち着いた雰囲気があり、
創業130周年を迎えたばかりの、
伝統のあるホテル。
建物は創業時の建物に手を加えながら、
更に磨かれて
サマセット・モームはこのホテルを称して
東洋の真珠と呼んでいる。
近代的設備を備えた豪華なホテルは
いくらでもあるが、
ラッフルズはそうしたホテルにはない、
風格と不思議な安らぎがあります。
シンガポールの5つ星ホテル。

到着した日は、
チェックイン時間の前だったが、
朝から雨。
荷物を預けて観光するつもりだったが、
前夜は深夜発の便。
時差は1時間ほどでしたが、
やっぱり堪える。
部屋に着いて暫くすると、
観光は後回しでベッドやソファで爆睡した。

午後2時から
ホテルのティフィンルームで
ハイティーを戴く。
シンガポールに行ったら、
これを絶対に愉しまなくちゃ、
と行く前にこのレストランを予約。
実はハイティーなるもの、
シンガポールに行くことになって、
初めて知った。
アフタヌーンティーに似ているが、
イギリス人に言わせれば別物。
アフタヌーンティーやハイティーは、
イギリスが発祥の地で、
シンガポールはかつてイギリス領。
そうした文化の名残が色濃く残っている。
アフタヌーンティーは言わば、
イギリスの上流社会の社交の場。
午後のひとときを、
オペラや観劇を愉しむ前に軽く食事をして、
お茶を飲み、小腹を満たして
優雅に過ごすというのがステイタス。
シンガポールには、
これを提供する店は多いが、
その頂点にあるのが
ラッフルズのティフィンルームのハイティ。
イギリス文化の象徴ともいわれ、
シンガポールを訪れる人の多くが
憧れるという。
コロニアル風の建物の中に、
このレストランがあり、
白を基調にした美しい佇まいで、
清楚にして優美。
お茶や珈琲とともに
三段式の皿の上には
サンドウィッチやケーキが載せられ、
この店では点心などの中華風の食べ物も
並んでいました。
席につくと紅茶や食事が運ばれて、
バイキング方式で
自分好みのメニューを皿に盛る。

ハイティーは、
労働者や農民が広めたもの。
アフタヌーンティーよりも
少し遅い時間帯に食し、
夕食を兼ねていたが、
上流社会の人たちは、
これと混同されるのを嫌った。
ハイティーは下層階級の人のたしなみで、
アフタヌーンティーとは似て非なるもの。
しかし今では当たり前のように
混同されて使われ、
それというのもアメリカ人が
「high」を「formal」と勘違いして
使ったことが発端とされている。
今は呼び方が違うだけで、
見た目の違いは殆どありません。
ハイティーはこの日で終わりましたが、
ティフィンルームではその後、
朝食を戴くことになりました。

2018.10.31

ラッフルズホテル

ティフィンルームの
ハイティー