秋の風物詩ーー
と言えばお月見でしょう。
中秋の名月は旧暦の8月15日。
年によっては、
9月初めから10月初めまで
1ヶ月の幅があるが、
毎年、同じ月を見るのに、
どうしてそんなに違うのかな、
と不思議に思ったものでしたが・・。
中秋の名月は
ススキ取りにはじまる。
小さい頃、
お月見の日になればお袋に
――しっかりしたススキを取ってきてね、
と言われて裏山に上り、
ススキを取りに行ったものでした。
それを花瓶に挿して
おはぎや果物を膳に並べ、
縁側にお供え物をする。
せっかく並べたお供え物も
月が見えなけりゃ台無し。
月が昇らないうちから
東の空を眺めては、
――今日は大丈夫かなぁ、
とそわそわしたものでした。
僕が子供の頃、
お月見泥棒というのがありました。
お月見の日は、
お供え物を盗んでもよいとされて
それが許される日でした。
隣の家に忍び込んで、
お供え物の団子を盗もうと
人目を盗んで
その隙を伺いましたが、
一夜限りの盗みのスリルは
有言不実行。
サスペンスの世界で
英雄になることはできませんでした。
あの頃の家は、
今では全く面影をとどめていませんが、
道路沿いに塀を構え、
古びた平屋の家があって、
南側の庭に面して広縁がありました。
そこにお月見の品を並べる。
月は東に、
お供えは南に面して。
夜も更けて、
人が寝静まる頃まで
月はお供え物に気付かない。
天空の真ん中に昇って
やっとお供え物に気付くのでしょう。
お袋は趣味人でした。
子供に声をかけて
――今日はお月見に行こうね、
と誘う。
それを聞いて不思議に思わず、
――行く、行く!、と応える。
どこか特別な所、
月がきれいに輝く所があるに違いない、
と思っていました。
車を走らせて約30kmほど、
小さな沼に辿り着く。
湖沼の際には薄が生えて、
湖面には赤い月が映し出されていた。
ここはお月見の名所。
それはそれできれいでしたが、
もっと別な何かを期待していたボクは、
正直、がっかりしたものでした。
ところでお月見泥棒さん。
お月見の日は、
お供え物を盗んでも叱られない。
僕にはできないけれど、
勇敢な子供は他の家に忍び込んで、
こっそりお供え物を頂戴する。
けれど大人はそれを見て、
あれまぁ・・、
という顔をしながら、
見て見ぬふりをする。
これはこれで、
大人目線のサスペンス。
今夜は中秋の名月。
きれいな月が見えるでしょうか。
2018.9.24.