台湾紀行-1/台湾事情

台湾に行ったのは、
東日本大震災の年の12月のこと。
台湾は柿の種のような形をした国で、
3000m級の高い山が連なる
中央山脈が縦断し、
太平洋側と東シナ海側に分かれている。
この時期は雨季を迎えていた。
着いてみれば、
台北は今日も雨だった。
小ぬか雨降る台北の景色は、
この時期の特徴だという。
NETで台北の天気をチェックすれば
1週間も雨マークが並んで、
最高気温も16度ほど。
ガイドさんいわく、
台湾の天気予報は当たりません。
雨ときどき曇り、
ときにはお天道様が顔を覗かせるでしょう、
みたいな天気予報で、
3つのうちどれかひとつ当たればいいや、
って当たり前でしょ。
その後も大降りになることはなく、
傘がなくても困らない。
それにしても台北は意外に寒かった。
沖縄より南に位置して
亜熱帯地方だというのに、
空はどんよりとした厚い雲に覆われて、
しとしと、じとじと気温はあがらない。

台湾は蒋介石が、
共産党国家に中国本土を追われ
臨時国家のようにして建国した国。
いずれは本土に還るぞ、
との強い思いを深くしながら急造した国で、
そんな半端さが見え隠れする。
例えば主要都市の名前。
北から、台北、台中、台南と並んで、
これってあんまり知恵のなさすぎじゃねぇ?
と思ったが、

そいじゃ高尾の由来は、と問われて、
多分、台湾原住民の呼び方じゃないの
と答えれば、コレが正解だった。
かつて台湾の南は広々とした竹林で、
竹林のことを「タカオ」と呼ぶという。
こんなところは、
アイヌ語に由来する北海道の地名に似ている。

台湾の景色は日本に似ている。
街行く人の顔も日本人にそっくり。
街の看板は漢字表記で、
風景もさほど違和感がない。
その意味では、
海外に来たぞとの衝撃は少ないかも知れない。
ガイドさんは日替わりで、
観光バスに乗る客も自在に組み合わせ、
当日のオプショナルツアーとして参加する人もいるし、
ちょっと違いのツアーで大抵は一緒、
という人たちもいる。
臨機応変で自在な組合せのツアー。

ガイドさんいわく。
台湾の人は日本が好きで
日本製品が大好きだという。
テレビなどの電化製品は、
ソニーやパナソニック。
エアコンは日立。
車はトヨタか日産。
それに対して中国製は大嫌い。
安かろう悪かろうのイメージが付きまとう。
それでもユニクロが、
台北に1号店を出店したときは大人気。

引きも切らぬ客が押し寄せて
客が列をなして並ぶ。
ラベルには「Made in Cina」の表記があるが、
台湾の人たちは
日本ブランドを信用して買うという。
輸入品だから日本よりちょっと高め。
日本の大衆文化をこよなく愛する国民。
台北を歩けば日本語表記で、
回転寿司、鍋、ラーメン、吉野家などの店が目立つ。
それより驚くのはセブンイレブンの多さ。
半端じゃない数でワンブロックに一店はある。
日本なら立地条件を入念にチェックするが、
台北では気にしないらしい。
店は手狭で駐車場はなし、
50mほどで二つの店があり、
これで大丈夫だろうか、
と他人事ながら心配になる。
セブンイレブンのルーツはアメリカだが、
ノウハウは純日本製。
台湾も日系のセブン&イレブンで、
イトーヨーカドーの傘下にありながら、
子は親よりも大きくなり、
今では事実上、
ヨーカドーがセブンイレブンの傘下になっている。
親子の地位が逆転して、
老いては子に従えということですかね。

それにしても
台湾人の中国嫌いはなぜだろう。
言葉も北京語。
かつては同じ系譜を踏む民族だったが、
建国の違いを経て同床異夢の道を辿る。
ガイドさんの話の端々にも
中国人を客として扱うが、

本当は嫌いとの雰囲気が漂う。
――中国人、いっぱい来ます。
  でもマナーが悪い、失礼・・。
台湾でも多くの中国人観光客を見かけるが、
彼らはホテルのバイキング料理でも、
皿に盛らず食べながら歩く。
煙草はポイ捨て、
ごみは散らかし放題、
大声で騒ぐ。
そんな傍若無人ぶりが情けない。
中国は急成長した大国だが、
モラルは立ち遅れている。
世界から紳士淑女の国として認められるには
まだまだ課題がありそうだ。

ガイドブックをひらけば、
台湾は見所満載とあるが、
決してそうじゃない。
台湾は建国百年。
台湾原住民による歴史もあるが、
めぼしい文化はない。
国土の広さは九州ほどで、
80%以上は緑深い山に覆われて、
狭い国土に2300万人の人が住んでいる。
狭い国土に、浅い歴史。
見所となる自然の風景も
日本ほど魅力はないように思う。
それでもかつての日本時代の文化を知り、
台湾という国の成り立ちや、
急成長を遂げた台湾の姿を見て
興味深いものがあります。
2018.7.16