中国人は日本が嫌い。
その点について、
不思議な記事を目にしたことがある。
中国人の90%は日本を嫌っている、
との統計があるなかで、
実は中国人は日本が好きで、
中国人の多くは日本に憧れ、
日本製品の品質の良さを認め、
敬愛しているという。
それが爆買いの理由にもなっている。
こうした爆買いの現象は、
円安やビザの大幅緩和の影響もあるが、
中国人が生活の質の転換に
舵を切りつつあるためでもある。
16億の人口を抱えながらも
後進国との誹りを受けつつ、
急激な経済成長によって
日本を抜いてGDP世界二位になった大国。
そうした事情を反映して
日本に訪れる中国人観光客は急増。
彼らの目的は、
観光よりも買い物。
その経済効果は少なくないが、
その一方でこうした現象が
さまざまな波紋を投げかけている。
そもそも中国人の爆買いのきっかけは、
中国メディアによる
日本製品の宣伝によるものらしい。
日本製品は質がいいよ!
故障しないよ!
不良品も少ないし信用できるよ!と。
それまでの日本に対する報道を考えると
信じられない気もするが、
ともあれ彼らは、
中国製品を買うより
日本に行って日本の製品を買う方が
断然お得ですよと煽っている。
統計は少し古いが、
彼らの買い物人気ランキングでは、
①医薬品、②化粧品、③温水洗浄便座と並ぶ。
中国国内では、
医薬品も化粧品も
Made in Chinaは信用されない。
まがいものが多いという。
だったら日本企業が品質管理する
日本の商品を買いなさいと。
そうした風潮は、
彼らの生活に対する
認識の変化によるものが大きい。
中国はアジアの貧しい国だったが、
このところの急成長でGDPは鰻上り、
世界第二位の超大国となって、
ならばそれに相応しい国へと
国民の意識が変わり始めた。
そのお手本として
隣国・日本に眼を向けはじめ、
日本に対する報道が増えて、
多くの中国人が日本を訪れ、
日本文化や生活レベルの高さに驚いている。
これまで批判的な報道ばかりだったが、
実は日本のことは殆ど知らない。
知らないまま日本に行くと、
本当はこんな国だったと知ることになる。
それが今の中国の置かれた立場だろう。
外交はお互いの国民が、
お互いの国を理解することから始まる。
政治の表舞台で繰り広げられるものだけが
外交ではない。
その意味で日中間の本当の外交は、
端緒を開いたばかりと言えるかもしれない。
少し話は逸れるが、
中国は貧富の差が激しい。
とりわけ沿岸部と内陸部、
都市部と農村部の差は大きく、
上海や北京などの大都市周辺は
どんどん裕福になるが、
内陸部は貧困から抜け出せない。
日本に来る人は大都市周辺の人ばかりで、
内陸の農村部の人たちが
日本に来ることはなく、
年収の少ない彼らにビザはおりない。
それにしても、
人気商品のランキングで
医薬品や化粧品ならいざ知らず、
なぜ温水洗浄便座なのか。
品物はでかく持ち運びも不便。
値段も張って、
中国国内では使用に適さないものも多い。
それでも売れる。
そこには中国のトイレ事情がある。
生活水準が高ければ、
それ相応にトイレもきれいだが、
公衆トイレは相変わらずだという。
北京オリンピックなどで大分改善されたが、
ちょっと街を外れれば、
とてもとても使用に耐えられない。
鍵は閉まらず、紙はない。
便器が掃除された様子もない。
そもそもオリンピック前まで、
中国のトイレの壁には仕切りがなく、
やっと改善されたばかり。
中国人に、こんなに汚くても平気なのか、
と問うと首を横に振る。
中国人ですら
公衆トイレの汚さに辟易している。
それが日本のトイレに対する憧れにつながる。
日本では公衆トイレもデパートのトイレも
驚くほどきれいだ。
温水洗浄便座も当たり前のように付いている。
これが日本人の平均的生活レベルで、
日本人の生活に対する美学ともいえる。
見えないところへの気配りや思い遣り。
だからこそ中国人は、
温水洗浄便座に
驚愕といえるほどの反応を示す。
しかし温水洗浄便座の
トップ企業であるTOTOは、
こうした中国人の爆買いを尻目に
余り売る気を示さない。
そもそも中国は、
温水洗浄便座を設置できる環境にない。
中国と日本は電圧が異なり、
使おうとすれば変圧器が必要になる。
しかも中国は電圧が不安定で、
水は不純物が多くて詰まりやすい。
TOTOには
そうした環境に適応した商品がないし、
使用を勧めることもしない。
商品のクレームに繋がるからだという。
それでも中国人は、
この珍しい商品を隣近所にひけらかし、
自慢したい気持ちが疼くらしい。
電気炊飯器も人気商品。
ごはんが魔法のように
美味しく炊けると期待している。
しかし、買ってみて、使ってみて、
思ったほど美味しく炊けない。
それもそのはず。
中国は水が不味い、
米が不味い。
これで美味しいごはんが炊けるわけがない。
失敗から学ぶ。
中国のごはんはなぜ不味いのか。
それには物事の本質を辿ることが必要だ。
日本人の気質には品質のこだわりがあり、
完璧なまで優れたものを作ろうとする、
モノづくりの精神がある。
それは、
目に見えないところへの気配りでもある。
中国の4千年の歴史の中でも、
培うことのできなかった伝統が
日本にはある。
2018.7.11