ある中国人は言い切る。
中国人は絶対にだまされない。
なぜかと訊くと、
だまされる前にだますからだと言う。
こんな事件があった。
ある男性が倒れている老人を助けて
タクシーで病院まで運んだ。
検査の結果、老人は足を骨折している。
しかし検査後、
この老人はとんでもないことを言い出した。
――この男性に押されて転んだ、と。
恩人であるはずの男性を訴えて
裁判沙汰に発展したという。
その後のインターネットのアンケート調査で、
――あなたは老人が転んでいたら助けますか?、
との問いに対し、
8割の人が「助けない」と答えたそうです。
日本人と中国人は驚くほど価値観が違う。
その違いを象徴する一文があった。
北京から来日した男性。
美しい日本女性と結婚して
周りの人に羨ましがられていた。
けれど、その日の飲み会では顔色が冴えない。
――奥さんとうまくやっているのか、
との間いに首をうなだれる。
彼は離婚訴訟の真っ最中だった。
ある日、
彼は外出しようとしたが定期券はない。
奥さんは休日。
そこで奥さんに、
――定期貸してよ、
と頼んだが、
普段は温和な奥さんも
顔を真っ赤にして怒った。
――これは私の通勤定期。
絶対に駄目。
使わせるわけにはいきません――
しかし彼は納得できない。
――どうせ使わないんだから、
使わなきゃ損だろう。
本当に頑固なんだから・・。
日本人なら当たり前のことも、
彼にはわからない。
他人が使えば不正使用だが、
それも理解できない。
それはどこまでも続いて、
やっぱり離婚という結論に達した。
その国にいれば当たり前のことも、
国によっては、
考え方も、価値観も、国民性も違う。
だから戦争も起きるし、
考え方の大きな違いも生じる。
理屈じゃなく、
そうした違いに
実感として付いていけるかどうか。
中国の倫理感覚がどうなっているのか、
よくわからないが、
中国という国の、
そうした変貌はどこにあるのだろう。
おそらくそれは毛沢東による
文化大革命に端を発している。
文革中は共産党に対して、
絶対的な忠誠を尽くさなければならなかった。
忠誠を尽くさない人間は告発され、
刑罰を科せられた。
親が子を、子が親を告発し、
夫婦もお互いに告発し合う。
学生は教師を、
教師も学生を告発する。
これではお互いの信頼関係が
成り立つはずはない。
そうした中で築かれた共産主義国家。
かつての精神主義は跡形もなく消え、
その後は中国共産党による一党独裁の国家。
国家存亡の機軸は経済至上主義に移り、
全ては国家の利害、
経済の利害が最優先される。
同僚が告発し合い、
自分以外は毛沢東と共産党しか信じない。
そんな社会が10年間続いた結果、
国家と人間の精神面のあり方は、
歪んでしまったように見える。
その後は拝金主義と、
自己中心主義が席巻する国となった。
中国には、
道徳という土なくして、
経済の花は咲かず。
という諺がある。
しかし今の中国社会は、
お金の前では全てが正当化される。
人命、環境破壊などは後回しされ、
手抜き工事、有害食品、賄賂、
労働者への賃金未払い、裏切り、捏造、偽装など、
そうしたことは枚挙に暇がない。
中国は賄賂社会。
どんな事業であれ
役人への賄賂なくして成り立たない。
著作権や特許権の侵害も当たり前で、
海賊版が大手を振って出回る国でもある。
これからの中国は経済一辺倒ではいられない。
公害問題は根が深いし、
諸外国との信頼関係も危うい。
日本と中国――
本当に理解しあうことができるかどうか。
それには互いの違いを知り、
歩み寄ろうとする姿勢がなければ、
どこまでも平行線のままだろう。
日本と中国は一衣帯水の国。
歴史的関係も深いが、
今は反目する場面も多い。
欧米の国々では、
許そう。しかし決して忘れまい、
との姿勢を貫いているが。
2018.6.22