小京都/妻籠・馬籠・奈良井宿・郡上八幡

◆中山道/妻籠・馬篭・奈良井宿

木曽路はすべて山の中である――――、
との書き出しで
島崎藤村の「夜明け前」がはじまる。
藤村の出身は馬籠。
中仙道・木曽路11宿の一つで、
妻籠と並んで木曽の山懐に抱かれた
江戸時代の宿場町です。
ひと頃は人通りも絶えた古い街道で、
妻籠宿や馬籠宿は崩壊寸前の町でした。
しかし村興しの一環として、
この古い町並みを復元しようと町民が立ち上がり、
見事にそれを為し遂げました。
新聞で紹介されたことがありましたが、
妻籠は古い宿場町の風景を再現して、
訪れる人が急増。
今はその頃より観光客は減ったものの、
最近は外人観光客が大勢訪れているようようです。
サムライ時代のこんな風景に、
日本のノスタルジアを感じるらしい。
車で妻籠から馬籠に訪れたことがあります。
夜通し走って夜明ごろに妻籠に到着。
朝陽が差し込んで
旅篭が並ぶ石畳の街を歩きました。
人通りのない通りはまるで映画のセットで
タイムスリップしたような感覚でした。
古い町並みには
暮らしの中で営まれてきた生活の知恵や、
人の知恵が作り上げた美しい風景があります。
格子戸の美しさや長い軒の連なる家並み、
そして旅篭の二階から見下ろすのどかな人の語らい。
そんなものが妙に心にひびき、
心なごむ旅情を誘います。

妻籠
馬籠
奈良井宿

◆郡上八幡

郡上八幡も掘割の風景が美しい。
僕自身は行ったことはありませんが、
いつか訪れたいと思う。
郡上八幡にも掘割がありますが、
そこに水が流れ、
水のある風景は、
その地に暮らす人の知恵が活かされ、
それが生活に馴染む
美しい風景を作りあげています。
掘割の下手には
川の流れを堰き止める仕切りがあり、
煮炊きや洗い物に使われ、
使い終われば外されて、
誰でもいつでも使うことができる。
そんな暮らしのある風景を、
郡上八幡の旅番組で紹介していました。
暮らしのある風景ーー。
そうした風景の中で毎年、
お盆には郡上踊りが繰り広げられる。
4日にわたり夜通し躍る祭りで、
いつもはひっそりした郡上八幡も、
この日ばかりはスポットライトを浴びて全国区の町。
25万人が訪れるという。
美しい風景には、美しい行事があり、
それが故郷の忘れがたい匂いを
感じさせてくれます。

郡上八幡

◆飛騨高山

飛騨高山が好きで何度も足を運びました。
造り酒屋の多いこの町は、
歴史に残る逸話こそありませんが、
人々の暮らしの中に
歴史の確かな手応えを感じます。
古くどっしりとした建物に入ると、
そこは少し薄暗く、
天井には重厚な梁があって、
いろりが吊るされている。
それは一見、
時代から取り残された風景ですが、
そこを訪れる旅人にとっては
なんとも懐かしい生活の匂いを感じます。
飛騨高山には、
そこにしかない風景があります。
少し足を延ばせば郡上八幡があり、
合掌造りで有名な世界遺産の飛騨白川郷があります。
合掌造りもまた生活の智恵が生んだ風景。
天に突き抜けるほどの高い建物に、
がっしりした骨組みが組まれ、
急勾配の萱葺きの屋根がある。
そこでは幾世代もの家族が
今も肩を寄せ合うように暮らしています。
そんな風景に新鮮な感動を覚えます。

飛騨高山

金沢 東茶屋

2018.4.25