◆堀北真希
女優は人を演ずる職業。
素のままの顔を演じて、
本人との落差を感じない人もいるし、
イメージキャラを活かしながら、
素顔とは全く違った顔を見せて、
女優としての魅力を引き出す人もいる。
女優・堀北真紀――。
結婚を機に芸能界を引退したが、
復帰する日も遠くはないように感じる。
掘北真希は変わった。
綺麗になったと思う。
デビュー当時は、
冴えない女の子を光る女性に変えるとの設定で、
ドン臭い少女を演じていたし、
「夕陽ケ丘三丁目」の映画では
集団就職で上京した、
田舎丸出しの冴えない女の子を演じた。
しかし、彼女の素顔は全く違う。
話し始めると
しっかり者のお姉さんという印象で、
ある監督は彼女を、
本当は怖い人と言い、
多くの男性陣に混じった食事会では、
いつまでたっても
注文が決められない男どもに苛立って、
その場を仕切り始めた、
とのエピソードが紹介された。
そんな話を「そうなんですよねぇ」と
笑いながら話していたが、
姉御肌の一面を見た。
黒木メイサとは同じ歳で同じ事務所。
同じ寮に住んでいた事もあって仲がいい。
一見すると黒木メイサがお姉さん的存在で、
堀北真希は妹風。
しかし、実は逆らしい。
黒木メイサの初ライブをこっそり見に行って、
立派になった彼女に見て号泣したという。
保護者のような面をもち、
友人とはいつまでも変わらない付き合いをして、
飾ることをしない。
彼女は、知人のお父さんの
「あいうえお」を大事に生きる、
という教えを守っているという。
「あ=愛、い=命、え=縁、お=恩」。
それを忘れなかったら必ず
「=運」が開けるそうだ。
人の個性は3通り。
生まれ持ったもの、
置かれた環境で与えられるもの、
そして自らの意志で創り上げていくもの。
生まれもったものは容易には変えられない。
しかしその置かれた環境で、
自分の意志で創り上げていくもの。
それが大事で、
人の個性はそれによって創り上げられる。
堀北真希は自分を創り上げる、
強さと賢明さがあった。
女優として復帰を待っている。

◆比嘉愛未
大分前ですが、
比嘉愛未が新聞の「親父の背中」という欄で
父親について語っていた。
彼女は沖縄出身。
小さい頃から女優になりたいとの夢があった。
しかし、夢が実現するとは限らない。
大事な娘のこととなれば、
親としては大きなリスクを背負わせたくはない。
人間として、女性として、
もっと地道な道を歩いてほしい、
との強い願いもあったのだろう。
彼女は小さい頃から甘えてばかりだったが、
その一方で父親は厳しかった。
高校生になっても門限は7時、
外泊は禁止、
男女交際は一切ご法度。
彼女はそれが面白くない。
思春期になれば好きな人だってできるのに、
なんで私だけという気持ちになった。
それはそうだろう。
それに父親は、
今は学業に専念することが大事、
と答えたという。
愛娘――――。
可愛ければそれだけでちやほやされ、
それなりに人生を愉しむことができるし、
それなりの人生を歩むこともできる。
しかし、愛娘だからこそ、
可愛いだけの女になってほしくない、
との気持ちが親にはある。
彼女が、
ーー女優になりたい。東京に行きたい、
と言ったとき、
父親は猛然と反対して
ーーできるはずがない、
1年で帰ってくるに決まってる、
と言ったが、
彼女は反発して家を飛び出した。
だから親には顔向けできないし、
電話もできない。
早く一人前に、との気持ちでいっぱいだった。
そして1年して
NHKの朝ドラ出演が決まったとき、
それを父親に告げた。
父親は、
ーー今まで何をしてるかわからなかったが、
頑張ったんだな、
と言葉少なに語り、
それを聞いて彼女の眼から
とめどなく涙があふれたそうだ。
父親の想い、自分の夢が報われた瞬間。
そんなものが一瞬に弾けて、
あふれる涙になったのだろう。
そんなところに、
父と娘の心の触れ合う音が聴こえる。
それからは家に帰れば、
父と娘で酒を酌み交わすこともあるという。

*
人生経験を積んだ人の言葉は、
優しさが溢れている。
そうした言葉の中に、
人は愛され、誉められ、
役にたつと感じた時に幸せを感じる、
という言葉があった。
ふと目にした小さな記事の中で、
筆者はその言葉を引き合いに
自らの幸せを語ったが、
ささやかではあるけれども、
日常の中にさりげない幸せを感じて、
いい人生を送っているなと感じさせた。
人には生まれ持ったものがある。
しかしそれだけでなく、
人を形づくるものを活かしながら生きるうちに、
学ぶものがたくさんある。
悲しい想いを経験した人は、
自然に優しさが滲んでくるように思うし、
いじめや辛い経験すれば、
人の痛みがわかる人間になる。
人の中のコントラスト、
内と外、表と裏。
人は多かれ少なかれ相反するものがあって、
そうした中でも人は日々自分が経験し、
体験したことの中から
自らの生き方を学んでいくように思うのです。
2018.4.20