ドラマの中の恋の行方

ドラマは、
キャスティングとシナリオで決まる。
どんなドラマであれ、
まずはシナリオありき。
いいドラマだな、
面白いなと思って脚本家を繰れば、
なるほどと思う。
僕の好みの脚本家は、
坂元祐二、倉本聰、福田靖、
野島伸司、北川悦吏子、
といったとろだろうか。
以前、再放送の「ヒーロー」を見たとき、
なかなか見応えがあって、
誰が書いたんだろう
と思っていると福田靖とあった。
彼の手掛けるドラマは、
心の機微に触れるものが多く、
感動的な台詞が散りばめられている。
救命病棟24時のシリーズも
そうだったし、
ヒーローでも然り。

以前「サワコの朝」という
トーク番組に
シナリオライターの大石静が登場して、
若手が育たない、
まいりましたと言わせる若手がいない、
と嘆いていましたが、
そうなのだと思う。
いいシナリオを作るには、
それなりに深く鋭い感性を備え、
それを言葉にする表現力が必要になる。
そうした感性や技を備えた若手が
育っていないということだろう。

1年半ほど前、
「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」
というドラマがあった。
有村佳純の主演で、

シナリオライターは坂元祐二。
「東京ラブストーリー」や「愛し君へ」
「それでも、生きてゆく」「Woman」
といったドラマを手掛けて、
次々とヒットを飛ばしてきた。
とりわけ感心するのは、
シナリオの作風やテーマがみんな違うこと。
小説家でいえば、
浅田次郎のようなタイプだろうか。
それだけ繊細で創造力も豊か。
才能に溢れている。

ドラマの中にこんな場面がありました。
主人公・音(有村佳純)の好きだった彼が、
東京を去って、
故郷の会津へ帰る場面でした。
彼らを慕う老婦人(八千草薫)が彼女に、
ーー追いかけなくていいの。
  本当に好きなら、
  ちょっとずるしたっていいのよ、
という言葉に首を横に振り彼女が言う。
――あのね、私ちゃんと好きになりました。
  短かったけど、ちゃんと好きになった。
  それが凄く嬉しかったんです。
  ずっと、ずっとね、思ってたんです。
  私、いつかこの恋を思い出して
  きっと泣いてしまう、って。
  私は今かけがえのない時間の中にいる。
  二度と戻らない時間の中にいるって。
  それくらい眩しかった。
  そんなことないから
  後から思い出して
  眩しくて、眩しくて、
  泣いてしまうんだろうなって。

そんな台詞が素朴で、ピュアで、切ない。
そんな想いがあふれて、
こんな台詞を語らせる坂元祐二というシナリオライターが、
なかなかだなと思うのです。
2018.3.30

いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう