銀河系伝説――。
ある宇宙飛行士が語った言葉に、
こんなものがありました。
この世でいちばん美しいもの、
それは地球。
漆黒の闇に浮かぶ地球は、
喩えようのない美しさで、
スペースシャトルの窓から
地球を見たとき、
その存在の圧倒的な大きさと、
余りの美しさに心を奪われた、
と言います。
それは写真では体感し得ないもの、
実際に目にした者だけが
実感できる美しさだとあります。
青く、美しく、
銀河系に浮かぶ極上の至宝――、
それが地球です。
そんなことを思いながら、
オーストラリアのエアーズロックで見た
満天の星空を思い出しました。
エアーズロックを訪れたのは
20年以上も前のこと。
西海岸のパースから
エアーズロックに行き、
オプショナルツアーの
星空観測に参加しました。
ホテルからワゴン車に乗り込んで
10分ほど走ると、
真っ暗な闇に呑みこまれる。
しかし、車を降りて空を見上げると
満天の空を覆い尽くす星。
砂をまぶしたように
漆黒の闇に星がまたたき、
中央には白いペンキを塗ったように
天の川が横たわる。
世界の臍と呼ばれる
エアーズロック。
赤茶けた岩肌を持つ
世界一大きな一枚岩で、
周りは荒涼とした大地が広がるばかり。
そんな所だからこそ、
空気が澄みわたり、
煌く星空を
見ることができるのでしょう。
夜空の中央にはくっきりと天の川が流れ、
この空に、この宇宙に、
これほどの星があるのか
と思えるほどの満天の星。
それは感動そのものでした。
壮大無限なる宇宙。
日本では見ることのない
地球のなかの宇宙――。
その迫力と感動は、
生涯胸に刻んで
忘れることのない風景となりました。
南十字星をご存じでしょうか。
南半球の空に
十字を切って浮かぶ4つの星。
それがひときわ美しく光るのは、
その蒼い光が
人の心にも十字を切って
神秘的に光り輝くからでしょう。
Southern cross(南十字星)――
夜空に浮かぶ無数の星の中でも、
それは特別な星。
美しい星です。
その星がいつまでも
人の心に光り輝く星であってほしい、
と願っています。
天空の浪漫――。
人はどれほど、
限りない宇宙に想いをはせたことか。
人はそれに浪漫を感じ、
無限なる宇宙に神を見たのです。
しかし今では、
星の光は街のあかりに消されて、
淡く、か細く、儚い。
それでも小さい頃は、
この辺りも星が輝く夜がありました。
真夏の宵――。
幼いころ、
近くの広場では白い天幕を張って、
ひと夜限りの映画館が上映されました。
そんな日の宵、
兄の手に引かれて、
とぼとぼと夜道を歩く。
そんなときふと空を見上げれば、
天の川が輝いて、
たくさんの星が瞬いている。
その星空を眺めながら、
兄は織姫と彦星の
哀しくも切ない物語を語ってくれました。
あれが織姫、あれが彦星・・、
それは機を織る織姫と彦星が
別れることになった
神様のお導きによる哀しい物語で、
そうした七夕伝説の話に浸りながら、
小さく頷いて夜空を見上げました。
その後も夜空を見れば、
そんな幼い頃の
流星の思い出、星降る夜――――。
これも大分前のことですが、
獅子座流星群が見られるというので、
夜中に起きて星空を見たことがあります。
11月――、
冷え冷えとして、
夜の闇も深まる2時頃でした。
空には暗い闇に包まれた星が瞬き、
南の空に眼を移すと
幾筋もの星が空から地上へ舞い降りる。
それが次から次へと、
流れては消え、
消えては流れ、
幻想的な風景でした。
――流れ星に願いごとをすると叶うよ。
と小さいころ、
言われたことがあります。
そんなとき、
そのつもりで星空を見ても
流れ星は見えない。
流れ星を見た記憶もない。
しかしその夜は、
流れ星が漆黒の闇から、
幾筋もの光として降ってきて、
天空の浪漫を感じたものでした。
2018.2.12